布マスク8千万枚、今後さらに配布 不要論噴出でも…9業者に発注済

布マスク8千万枚、今後さらに配布 不要論噴出でも…9業者に発注済

政府が新型コロナウイルスの感染防止策として始めた布マスクの配布事業で、介護施設や保育所など向けの布マスクの発注と製造が続き、今後さらに約8千万枚を配る予定であることが厚生労働省などへの取材でわかった。

全戸向けの配布は6月に終わり、すでに店頭でのマスク不足も解消されて久しい。配布はいつまで続くのだろうか。

「忘れた頃に突然、という感じだった」。東海地方にある保育園には、4月に続いて6月にも、職員用の布マスクが届いた。園長(53)は「万が一の時のために備蓄しているが、今のところ出番はない。自分で使うなら、もう少し呼吸しやすい形のマスクを選びます」と困惑気味だ。

政府が配布を続けているのは、介護施設や保育所、幼稚園など向けの布マスク。総額約466億円の予算で始めた全戸向けの布マスク、通称「アベノマスク」の配布とともに、こちらは約504億円の予算で3月下旬から配り始めた。カビや虫などの混入が見つかって回収騒ぎになった妊婦向け布マスクもこれに含まれる。素材や形状もアベノマスクと同じだ。

政府の布マスク配布は、店頭のマスク不足が続いていた3月下旬、厚労省が緊急対応策として介護施設などに布マスクを配ると発表。4月1日には安倍晋三首相が、5千万余りの全戸へ2枚ずつ配ると政府の対策本部で表明した。

朝日新聞は、布マスクの配布事業で厚労省がこれまでに業者と結んだ全ての契約書計37通を入手。取材も踏まえて分析したところ、配布・発注済みの布マスクは計約2億8700万枚にのぼり、総額約507億円の費用がかかっていた。うち郵送やコールセンター、検品などの事務経費が約107億円を占める見通しという。いずれも入札をしないで業者に発注する随意契約だった。

このうち、全戸向けの布マスクは約1億3千万枚を総額約260億円かけて配布。介護施設など向けの布マスクは計約1億5700万枚、総額約247億円で、全戸向けの配布が完了した2日後の6月22日にも、伊藤忠商事など9業者に計約5800万枚を発注していた。契約書によると8月末までに納入される予定となっている。

厚労省によると、介護施設などには職員と利用者を対象に、保育所や幼稚園、放課後児童クラブなどには職員を対象に、1人あたり7枚ほどが行き渡るように配り続ける計画という。

まず1回目として4月中旬までに約2千万枚が配られ、6月下旬からは約4千万枚の配布が続いている。妊婦向けなどに配る枚数を除いても、まだ約8千万枚が残っており、厚労省の担当者は「配布時期は未定だが、なるべく早期に配りたい」としている。

だが、すでに店頭や通販でマスクが品薄な状態は解消されている。通販の価格比較サイト「在庫速報.com」の運営会社アスツール(東京)によると、使い捨てマスク1枚あたりの最低価格のピークは4月24、25日で1枚57円。その後は下落が続き、5月1日に39円、6月10日には10円まで下がったという。加藤雄一社長は「供給元の中国でコロナが収束した影響か、4月下旬ごろから供給量が増えたようだ。今はほぼコロナ流行前の水準に戻った感じだ」と話す。

厚労省の担当者は「必ずしもまだ十分マスクが行き渡っていると言い切れない状況の中で、布マスクを配ることで需要を抑制する効果は十分認められる」と説明。一方で、今後新たに布マスクを発注する予定は「現時点ではない」としている。